阪神大震災を機に、国会の衆参両院の事務局が災害時の非常食として、米国製の宇宙食の備蓄を始めている。最高裁も、宇宙食の輸入業者に問い合わせるなど検討中だ。一方、乾パンと赤飯の缶詰しかないという首相官邸では「今後、いろいろと検討していくと思う」。官邸の遅れが目立っている。
衆参両院が備蓄を決めたのは、米航空宇宙局(NASA)がアポロ7号以降使用しているという保存期間25年の缶入りドライフーズ。チキンや野菜などの3種のシチューと、ビスケットだ。
お湯を加えてシチューを試食した衆院の衛視からは「なかなかおいしい」と評判だった。水がなければ、そのままでも食べられる。これまで国会では、カップめんなどを緊急用に置いていたが、徹夜国会などの際に食べてしまうことが多く、「備蓄」といえるものは事実上なかった。
計画では、衆院が5千人、参院は3千人のそれぞれ3日分を備蓄する。衆院の場合、議員、秘書、職員ら約4千人に加え、約千人の避難住民を想定し、計4万5千食をそろえる。1食分が約5百円ということもあって、両院とも3年がかりで購入する計画だ。
阪神大震災の後、衆院事務局で調べたところ、永田町や霞ヶ関など日本の中枢といわれる地域で、災害時を想定して本格的に食糧を備蓄していた公的機関は、麹町消防署だけだったという。
衆参両院が購入を決めた宇宙食の輸入元・セイエンタープライス社(東京・平河町)によると、16年前から非常用食糧として輸入を始めた。味がよくて、長持ちすることから、震災後、注文や問い合わせが殺到した。「官と民を比べると、民の方が対応が早かった」と話す。
最高裁事務総局では昨秋から、同社の輸入品について調査を始めた。震災後には、先に導入を決めた衆院事務局に問い合わせるなど、検討を重ねている。
一方、永田町の首相官邸では現在、官邸職員約75人を含む約百人が1週間持ちこたえられるだけの食糧は備蓄しているというが、ほとんどが乾パンや赤飯などの缶詰類。震災後も、「官邸から、非常食についての指示はない」(総理府官房総務課)という。
官邸の担当職員は「万一の時、毎日赤飯ではうまくいかないだろう。いろいろ新しい物もでてきているようなので、今後、調査、検討していきたい」と話している。