宇宙食は非常食ではない。非常食は災害などの時、持って逃げるための食品。そして、備蓄食は持ち出さないで保管しておく食品である。だから、味が良くて保存が可能な宇宙食は備蓄には最適なのだ。

阪神大震災をきっかけに国会でも食糧の備蓄をしようってことになった。お堅い国のやること、どうせ乾パンにニシンの缶詰あたりなんじゃないの？なんて思ってたら、なんと、それが宇宙食―――。
でも、なんで宇宙食なの？　「賞味期限が２５年間もあるんです。ふつうの非常食は長くて５年間くらいですから、経費的には宇宙食のほうがずっと安いんです」（衆議院事務局・会計課）
２５年だって？　でも、そんなことで驚いてはいけない。この宇宙食、本当は半永久的に保存ができるというのだ。「この宇宙食はフリーズドライ方式で作られているんですが、これはもともと薬品を保存するために開発されたシステム。だから安全性は高く、本当は封を切るまでは半永久的に保存が効くんです。
でも、日本じゃそんなことなかなか信じてもらえないんで、仕方なく２５年間ってことにしてあるわけでして・・・・。」（発売元の（株）セイエンタープライズ・斎藤祐宏さん）
おまけに、この宇宙食の値段は１食５００円ほど。
衆議院ではおよそ議員・職員など５千人の３日分、４万５千食を準備することになっているというけど、この値段で２５年間以上ももつなら、なるほど税金のムダ使いになることはないだろう。
気になるのは味のほうなんだけど、これも発売元によれば、「ホテルオークラのシェフに味見してもらって太鼓判を押してもらいました。」（斎藤祐宏さん）
確かに衆議院の職員による試食会では、「おいしいという意見が多かったですね。しかも、ひと昔前のようなチューブに入っている宇宙食じゃなくて、ちゃんと肉も野菜もかたまりで入っていて、栄養のバランスもいいみたいです。」（前出・衆議院事務局・会計課）と、評判は上々だった。
記者も「パイロットプレッド」というクラッカーを試食してみたが、どっしりとした食感で、乾パンなんかよりはるかにうまい。おまけに量もたっぷりで、２枚も食べればけっこう満腹。これなら家庭での備蓄を考えてもよさそうだ。
リスク管理が甘いと酷評されていた国だけど、宇宙食に目をつけるなんて、まんざらじゃない。そう思っていたら、なんのことはない。宇宙食の販売がスタートしたのは今から１６年も前のこと。
「すでに病院や学校、老人ホーム、それから一般企業でも電気、ガス、水道関係を中心に宇宙食の備蓄は進んでいますよ」（前出・斎藤祐宏さん）
やっぱり、この国は官よりも民のほうが、なんでもやることは早いわ。